Global Scan ・ 2026年 10月号
「体の軸を、油で整える。」 〜MCTオイルが歩行バランスと脳代謝に与えた影響〜

今月のグローバルスキャンは 2022年に発表された論文を要約してお届けいたします。
はじめに
「最近、歩くときに少しふらつく気がする」「段差が怖くなってきた」——そんな変化を感じ始めている方は少なくありません。
歩行時のバランス能力は、転倒リスクや日常生活の質と深く関わっており、加齢とともに少しずつ変化していくものです。
そんな毎日の変化に寄り添う存在として、近年注目されているのがMCTオイルです。

そのMCTオイルが、脳や神経系の働きにも影響を与える可能性があることが分かってきました。今回ご紹介するのは、東北大学加齢医学研究所が行った、MCTオイルと歩行バランス・脳のエネルギー代謝に関する研究です。
どのような研究?

東北大学加齢医学研究所が行ったこの研究では、健康な高齢者63名(65〜80歳)を対象に、3ヶ月間の試験が実施されました。
糖尿病・高血圧・精神疾患のない健康な方が対象で、参加者はランダムに2つのグループに分けられました。

両グループとも、3ヶ月間継続して摂取し、その変化を比較しました。試験期間中は通常の食生活をなるべく変えないようにしながら進められました。
この研究では、MCTオイルが歩行や脳のエネルギー代謝などに与える影響を、次の2つの指標で調べました。
1.歩行バランス指数(Lissajous指数):腰に小さな加速度センサーを装着し、6メートルを歩く際の体幹の揺れ方を計測しました。
♦ Lissajous指数とは
腰に装着した加速度センサーで体幹の前後・左右の揺れを記録し、その軌跡を「リサージュ図形」として数値化したものです。数値が小さいほど体幹が安定していることを意味し、転倒リスクの評価にも用いられます。センサーの加速度をもとに算出した値のため、cmやkgのような単位はありません。
2.脳のブドウ糖消費量(FDG-PET):画像検査を使って、脳の感覚運動皮質がブドウ糖をどれだけ使っているかを調べました。
♦ FDG-PETとは
「フッ素デオキシグルコースPET」の略で、脳内のブドウ糖消費量を画像化できる検査です。
脳が活発に働いているほどブドウ糖を多く使う一方、同じ働きをより少ないエネルギーでこなせるようになると消費量は減少します。
数値は比率で表され特定の単位がないため、今回は開始時を100とした場合の相対的な変化(%)で結果を比較しています。
研究の結果
1.歩行バランス指数(Lissajous指数)の変化
3ヶ月後、MCTオイルを摂取したグループAの歩行バランス指数は33.9から23.1へと大きく改善しました(数値が低いほど安定)。
一方、対照群のグループBでは34.7から31.3とほぼ変化がみられませんでした。

2.脳の感覚運動エリアのエネルギー利用の変化
MCTオイルを摂取したグループAでは、3ヶ月後に脳の感覚運動皮質でブドウ糖の消費量が約90%低下しました。
これは脳がより少ないエネルギーで同じ動作をこなせるようになった、つまり脳の処理効率が向上した可能性が示唆されました。
対照群のグループBでは変化はみられませんでした。
(下のグラフは、開始時の数値を100とした場合の相対的な変化を示しています。)

さいごに
今回の研究から、MCTオイルを続けて摂ることで、歩行時のバランスが改善し、脳もより効率よく働くようになる可能性が示されました。
しっかりとした足取りは、外出や趣味の時間などを楽しむための土台にもなります。毎日の食事にMCTオイルを取り入れることが、これからも自分らしく動き続けるための後押しになるかもしれません。
